さっきまで座っていた席に戻ってから、
カップケーキをぼんやり見ていた。
脳裏に浮かんでくるのは、
今井さんとアシダさんで。
今井さんの運転する車の助手席に乗るアシダさん。
今井さんと腕を組んで歩いているアシダさん。
それから、
今井さんに
好き
って言われて嬉しがっているアシダさん。
今井さんに、
結婚しよう
ってプロポーズされているアシダさん。
全部全部あたしの想像だけど、
本当に見たみたいに鮮明な映像が頭のなかに浮かんできて。
嫌なのに、
あたしの頭のなかの暴走は止まらない。
このカップケーキ、どうしよう?
もったいなくて食べられないし、
かと言って
とっておいたら
胸が痛みそうで。
・・・・・それで、
こうやってあたしが弱ってるときに
あなたは現れる。
「佐藤さん、木村、帰ったんだってな。
一緒に、まわっても、いいか?」
まだ、あたしのこと好きなんですか?
「ごめん、注目浴びたく、ないから。ごめん。
それに、なんか疲れちゃって。ここで休んでたい。」
「そうか。俺こそごめん。
そのカップケーキ・・・。
佐藤さんも、買ったんだ。
俺も買って食べたんだけど、うまかった。
オススメ。」
片想いの人からもらった、なんて言えないよね。
「そ、そうなんだ。
楽しみ。
じゃあ、またあとでクラスでね。」
「うん。また。」
ごめん、
中島くんのこと好きになれる予定はない。
やっぱり、だめ。
ごめんね。
でも、それにしても
なんで今井さん、ここにいたんだろう?



