曇り、ときどき雨。君に、いつでも恋。




あたしが必死に自分に言い聞かせてたとき



「これ、やるわ。」

そう言って、
今井さんがテーブルの上にかわいい袋に入ったカップケーキを置いてから、歩いていった。


たしかこれ、
家庭部が販売してるやつ。


なんで?

あたしのためですか?

それとも・・・、
アシダさんにあげる予定で、
何か理由があってあげられなくなっただけですか?



嬉しいような、複雑な気分。


あたしはさっと立ち上がって、小走りで今井さんのところに行った。


「ありがとう、ございます」

あたしの声に、今井さんが足を止めて振り返る。


っ、、、


・・・また、だ。

また、今井さんが笑った。


心臓の鼓動がいきなり加速するのがわかる。
音が聞こえちゃうんじゃないか、っていうくらいに、バクバクして。


「美味いといいな。」


今井さんの口調と表情は、すごく優しくて。
好きだから、こう見えるだけかもしれないけど
その甘い笑顔に溶けそうになる。

にかっとした笑顔じゃなくて、
ふんわりした、笑顔。


最後にこの笑顔を見たのは、
たしか、
アイちゃんと田代くんが来たとき。

だから、3か月ぶりくらい、か。



いつも、こうやって笑ってればいいのに。


ってやだ、また見とれちゃいそう。



「えっと、、、


どうして、おかし・・・?」




「・・・・・・。


・・・なんでだろ、な。」




答えになって、ない。


一瞬、今井さんが悲しそうな顔をしたような気がした。

勘違い、かもしれないけど。


まあいいや。
聞かない方が、傷つかないのかもしれない。


「じゃ、また。」


今井さんが肩にカバンをかけ直した。


そのとき、今井さんとあたしの間の空気が揺れて、
あたしの鼻を香水の匂いがくすぐった。


たしかこの匂い、、、


アシダさんの、香水の匂い。


今日もアシダさんと、いたのか。
アシダさんは校舎の外とかで、待ってるのかな。


「はい。」



あたしの声を聞くと、
今井さんは、
いつもより少しゆったりした歩調で歩いていった。