「おはようございます。」
夏休みもあと1週間。
今日もあたしはバイトです。
自分の気持ちを自覚してから、どんどん今井さんに対する好きっていう気持ちが加速するようだった。
必死に押さえつけて、
でも、アシダさんがベッタリしているのを見るとどうしようもなく苦しくなって。
あたしが恋を経験することで、
中島くんに、あたしがどれだけひどいことをしたのかも実感した。
「お疲れ様でした。」
その日のバイトも何事もなく終わって、休憩室で休んでから帰ろうと思っていた。
休憩室に入ろうと思ってドアノブに手をかけたとき、
中から声が聞こえてきた。
アシダさんの、声。
ってことは中に多分、今井さんもいる。
なんか入りづらくてドアの前でためらっていた。
「ユウスケ~、なんでこんなに冷たいのー?
結婚するまでには直しといてよー?
まあ、あたしが卒業してからだからさー、あと2年以上あるけどさーあ?
結婚してからもそんなに冷たいとかあたしやだー。」
け、けけけ結婚?
うそ。
って、ユウスケって今井さんのことだよね?
今井さんの名前知らないけど、多分そう。
信じたくなくて、そっとあたしはその場を離れた。
帰りの支度を急いでして、店を出ようとしたとき休憩室から今井さんとアシダさんが出てくるのが見えた。
やっぱり、今井さんだったか。
アシダさん。婚約者だとは思わなかった。
今井さん、アシダさんみたいな人がタイプなの?
今井さんは、ああいう人苦手だと勝手に思ってたけど。
でも婚約してるってことは、好きなんだよね。
うそ。
やだ、信じたくない。
うそうそうそうそうそ!!!
夢なら、いいのに。
あたし、もう望みがひとかけらもないじゃん。
婚約者いるとか、なにそれ。
今井さんと両思いになれるなんて、思ってないけどさ。
婚約者いるとか。
絶望的。
それも、あたしの知ってる人。
辛すぎる。
これから、あのふたりを見ていられる気がしない。
こんな無理な恋とか、最悪っ・・・・!
恋したと思ったら失恋とか、もう、なんなんだろう。
こぼれそうになる涙を必死にこらえた。
でも、中島くんにあたしはひどいことをした。
中島くんの気持ちが今ならわかる。と思う。
あたしがこんな無理な恋しちゃったのは、
中島くんにあたしがしたことへの、
罰なのかもしれない。