「こんにちは。」
店のドアを押し開けて、中に入る。
つい、目で今井さんを探してしまう。
あ、いた。
やった・・・!
自然と、頬が緩みそうになる。
って、あたし、気持ち悪いんですけど。
目が合いそうになって、慌てて目を反らした。
じゃあ、着替えるか。
ここでもたもたしてても、
「遅い。」
って言われるもんね。
スタスタ早足で更衣室に向かう。
「佐藤さん。」
ぎくっ。
今井さんの、声。
うっ。
やっぱりまだ、今井さんのことは怖い。
尊敬は、してるけど。
遅い。って言われる?
いや、体調悪いくらいで休むな?
あたしは、おそるおそる振り返った。
「は、はい。」
今井さんは、いつも通り仏頂面をしてた。
「無理、すんな。」
・・・え?
また、優しい。
昨日休んだこと、言ってるんだよね?
「あ、ありがとうございます。」
「ん。」
うわ、嬉しい。
無理、すんな。
やば。嬉しすぎる。
たった、ひとことなのに。
あたしの心を踊らせるには十分すぎで。
「突っ立ってないで早く着替えろ。」
うっ。いつもの今井さんだ。
でも、正直、全然嫌じゃない。
「す、すみません!」
あたしは小走りで更衣室に向かった。



