「お疲れ様でした。」
あたしは店を出て、駅までの賑やかな道を1人歩く。
今日は、
珍しく今井さんとシフトがかぶってなかった。
前に今井さんとシフトかぶらなかったときは、
嬉しくてほっとしたのに、
今日は、残念に思ってる自分がいて。
なんかあたし、単純だな。
ちょっとほめられたくらいでこうなっちゃうとか。
単純すぎて、笑えてくる。
けど、こうやって浮かれてると気が抜けて、
またすぐ何か怒られちゃうから気をつけなきゃ。
でも・・・
今日は、何事もなく終わって良かった。
昨日のことがあったから少しびくびくしてたけど。
はあ。小さなため息を1つ。
週5日バイトって、さすがにキツいかも。
暑くなってきて、疲れがたまってくる。
でもママのためだから、頑張んないとなあ。
今井さんが
もうちょっとほめてくれたら頑張れるかもしれない、
なんてね。
なんか今井さんのことばっか、考えてるな、あたし。
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『次は~終点○○駅~○○駅~右のドアが開きます。
お忘れもののないようにご注意ください』
はっと気づくと、あたしの最寄り駅はとっくに過ぎてて、終点まで来ちゃってた。
電車に揺られて気持ちよくて、あたし寝ちゃってたんだ・・・。
うわー・・・やっちゃったな。
あたしの駅までは、5つ。
すごく遠いわけじゃない。
終電逃したわけじゃないからまだ良かったか、
ほっと胸を撫で下ろす。
ドアが開いて、一歩外に出ると、
生暖かい夜風に包まれて、
もう夏、か。
そう思うと同時に、
ザー、ザー、ザー、
雨の音が聞こえてきた。
うわ、やば。傘持ってないし。
この音だと、結構降ってる・・・。
今日は、なんだか
ツイてない。



