それからアイちゃんは、
田代くん田代くん言ってて、
恋する乙女オーラ全開だった。
  

それはもう、聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいに。




「今日は頑張って話しかけてみる!!

ばいばいコハル~」
  

「はいはい。

中島くんと仲良くね~」



いつもよりテンション10倍くらい高い状態でアイちゃんは部活へと向かって行った。


あたしは今日もバイト。


いつもより、バイトに向かう足取りが軽いのが自分でもわかる。



少し、興奮してて、今日も今井さんにほめられないかな、とかちょっとだけ、期待して。


まあたぶん、この期待は裏切られるんだろうけど。





今井、さん。

背が、180センチくらいあって声は低め。
いつも、無愛想。
接客、神。



あたし、今井さんのこと、これくらいしか知らない。



大学生なのかどうか。
いつから、バイトしてるのか。
下の名前は、何?
年齢は? 
プライベートでは、どんな感じなんだろう?




昨日の今井さんの笑顔が、
あたしの頭の中で浮かんでは消える。
どんな人、なのか、全然わからない。



今井さんのことが、知りたい。
今井さんと、話してみたい。
今まで、今井さんには怒られるだけでまともに話したことはなくて。
 
もっとあの笑顔を見たいな、なんて、思ってしまった。