バイト先に着いて、頭を切り替えていつものように忙しく働いて、あるテーブルに料理を届けたときのことだった。
「お待たせ致しました。
こちらが
ジューシーハンバーグwithしょうが焼き
と、
シーザーサラダでございます。
以上でご注文はよろしいでしょうか?」
「あ""?
よろしくねーよ!!!!!
だいったい、出てくんのがおっせーんだよ!
どうしてこれに15分もかかるわけ??
それに、メニューの写真と全然違うじゃねーか!!
詐欺だ詐欺!!!!
このぼったくりがぁっ!!!!
どうしてくれるわけ??
なあ、ねえちゃんよぉ」
30代くらいのその男の人は、そう怒鳴って、
テーブルをバンっと蹴ってあたしを睨んだ。
周りが静まり返った。
ど、どうしよう、怖い、
こういうときどうするんだっけ、
えっと、研修のときに教えてもらったけど、
パニックででてこないっ!!!!
と、とりあえず謝る・・・?、
「も、申し訳ありませんでした!」
「申し訳ないぃ?そんなんで済むと思ってんのかよぉ!!」
ひっ。
だれか、助けて。
こ、こわい。
どうすればいいのっ?
ほんとに、わかんない!!
どうしよ、だれかっ!!!!!
お願いっっっ!!!!!はやく!!!!!
「本当に、申し訳ありませんでした。」
・・・・・・・え?
隣で腰を深く曲げて頭を下げているのは今井さんで。
「他のテーブル、対応して」
あたしの耳元で小さく今井さんに言われて、
あたしは解放された。
こ、こわかった・・・。
・・・あー、あとで絶対、怒られる。
でも、今井さんが来てくれて、本当に良かった。
ありがとう、ございます。
心の中でお礼を言いながら
オーダー待ちのテーブルに行く途中でちらりと今井さんの方を見て、
あたしは思わず目を見開いてしまった。
あたしの目に映った今井さんは、極上の笑顔で対応してて。
普段の今井さんからは、想像できない、にこやかなとびっきりの笑顔。
なんて言ってるかはわからないけど、男の人ももう静かにしていた。
す、すごい。すごすぎる。
普段、接客してるの見ないからわかんなかったけど、
今井さん、すごいん、だ。
あたしが注意されるのも、当然、か。



