「では、これより中島家と水沢家の見合いを始めます」

和海の父の言葉で沢山の食べ物が運ばれてきた。

知らない人に囲まれて緊張していたが、目の前の料理に目が奪われる。

一つ一つの料理が色とりどりで食欲をそそる。

私は先生に教わった通りの作法で食べようとしたが、

「こんにちは、私はお母さんの妹の夏実っていうの。よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

こんなことが何回も続いてこれっぽっちも食べられない。

私はほんの少しの合間をぬって一口食べた。

「んー、美味しい」

とっても美味しい!!

満面の笑みで頬張っているとおじさんがやってきた。

「有紀ちゃん、おじさんは有紀ちゃんのお父さんのお兄ちゃんなんだ」

「っ……ごくん……。そ、そうですか。これからよろしくお願いします」

私は急いで飲み込んでお辞儀をした。

「いいんだよ。もっと食べたいんでしょ」

おじさんに悪い笑みを浮かべて言った。

「じゃ、お言葉に甘えて」

私はたけのこを口に入れた。

「美味しい……!」

何を食べても美味しい!!

「有紀ちゃんは可愛いね。これも飲んでみて」

「ありがとうございます」

コップに注がれた透明な液体を飲んだ。
ん?これお酒じゃない?
飲んだあとに気づいた。

「有紀ちゃん、おじさんは辰巳って言うんだ。何かあったらいつでも頼ってね」

「あ、はい」

私は適当に返事をした。

「じゃあ、おじさんはもう行くから」

おじさんはニヤリと笑って去って行った。