どこから見つけてきたのか、南くんがティッシュの箱をくれた。


何枚か抜き取り、涙を拭う。


必死で堰き止めてきたものが、一気に崩れてしまった脱力感。でもまた、ここを出たら裕也以外をシャットダウンしなければならない。そのことを思うだけで憂鬱で、どこまでも体が沈み込んでいきそうだった。


「だから裕也はやめとけって言ったのに」


今はそんな南くんの言葉も、素直に受け入れられる。


何度か忠告してくれたんだ。


同じサッカー部で、裕也の女癖の悪さを見ていたからだろう。


でももう__。


「遅いよ」


ぼそりと呟いた。


もう遅い。


【三鷹裕也が一生、私だけを愛するようになる】


一生だ。


それが破られる時は、裕也は私を殺して自らも死ぬだろう。


だから逃れられる術はない。


「別れられない?」


「無理」


即答できる。


殺されるくらいなら、今のままでいい。


こうやって、他の男と接触さえしなければ問題ない。


「でもそれって、付き合ってるっていえる?」


「えっ__?」


「渚のこと泣かせて悲しませて、裕也には渚と付き合う資格はないよ」


南くんは拳を握りしめていた。


とても強く、悔しそうに。