“柚生くん”




大好きな人がいた。五つ年上の隣の家のお兄さんだ。

柚生くんは優しかった。泣きべそな私に、いつも泣き止むまでずっと側に居てくれた。


彼が中学生になっても私を小学校まで手を繋いで学校まで送ってくれていた。

お年頃になって手を繋ぐのが恥ずかしく思えてきて、嫌だと伝えた時は酷く落ち込んで、1日風邪で寝込んでいた。


彼は写真が好きだ。私は写真を撮っている彼が好きだった。運動会もそこらのお父さんばりにレンズを覗き一瞬の時間を写真に収めていた。


彼は学校で写真の賞を取ったりしていたらしい。

けれど、柚生くんの写真が他と比べてどこが優れていたのかは、ちっとも分かんなかった。