一限目の授業が終わって、
席を立った橙輝。


どこに行くんだろうと
その後をついていくと、


橙輝が向かったのは
小さな空き教室だった。



こんなところで一体何を?


ドアの隙間から覗いてみると、
黒板に何か描いているところだった。


「あっ……」


白、赤、青、黄色、緑。


色とりどりの色を使って描かれたそれは、
まるで写真を見ているみたいだった。


これは学校の近くの小さな土手なのかな?


昨日見た女の人が
白いワンピースを着て立っている。


もっとよく見ようと身を乗り出した時、
ふいに扉が滑ってスライドした。


ガタンと音を立てて盛大に転ぶ。


橙輝は驚いたように
振り返ってあたしを見ていた。


「お前、なんでここに……」


「あの……あはは」


「あははじゃねぇ。
 なんでこんなとこにいるんだよ」


「あんただって。いつもここで絵を描いてるの?」


あたしが問うと、橙輝は
面倒くさそうにため息をつき、


手に持っていたチョークを置いた。


手はいろんな色のチョークの粉で汚れている。


よく見てみれば、制服も少しだけ汚れていた。