ご飯を食べ終えてお風呂に入る。


そして部屋に戻って音楽をかけた。


明日からあたしは、鳴海梓なのか。


新鮮だけど、今までとは何も変わらない。


変わらずうちは四人だし、
学校でも特に変わることはないし。


変わることと言えば
あたしの中の気持ちだけ。


ちゃんと変われるのかな。




トントン、とノック音がした。


言わなくても誰か分かる。


あたしはベッドから起き上がって
どうぞと声を上げた。



扉が開いて橙輝が入ってくる。


お風呂に入ったのか、
少しだけ髪が濡れていた。


橙輝はベッドに腰を下ろすと、口を開いた。


「とうとう親父たち、再婚すんだな」


「そうだね」


「鳴海梓か。なんか新鮮だな」


「そうかな」


「そうだろ。妹になるんだもんなあ」


妹か。


なんだかそう言われるのも
慣れてきたかもしれない。


気分を落ち着かせるために
テーブルに広げていた教科書に目を落とすと、


橙輝はそれを覗き込んできた。


「勉強か?」


「うん。全然分かんないけどね」


「どれ。見してみ」


「やだ。どうせ馬鹿にするんでしょ」


手で囲うように防ぐと、
橙輝は笑って更に覗き込んできた。


もう。


こんな時ばっかり人懐こいんだから。


いつも馬鹿にする時とかからかう時は
少年のようなテンションで話しかけてくる。


この時の橙輝はいつもと違って
年相応のような気もする。


いつもが大人びているだけね、きっと。