「お母さん?帰って来たのー?」
目を閉じてそう叫ぶと、返事はない。
もう、聞こえないのかな?
もう一度叫ぼうと目を開けると、
目の前には怪訝そうな顔をした橙輝が立っていた。
「う、うわっ!」
「お前、何してんの?」
「ちょっと、びっくりさせないでよ!」
「お前が勝手に驚いたんだろ」
慌てて体を起こして橙輝を見ると、
少し変わった所に気付いた。
ヘルメットを持っている……。
「どこに行ってたの?」
最近橙輝は一日中どこかに行っては
夜遅くに帰ってくる。
どうせいつも通り
絵を描いていたんだろうなと思っていたけれど、
どうもそうじゃないみたい。
「ちょっとな」
「何よ」
「……教習所」
「教習所ぉ?」
教習所って、車の免許を取るところ?
でも、なんで橙輝がそんなとこに?
ハテナマークいっぱいの顔を見せると、
橙輝は笑った。
「バイクの免許、取りに行ってたんだよ」
「バイク?」
「おう。やっと取れた。
バイト先の先輩にバイク譲ってもらったから、
ちょっと練習がてら乗ってきた」
「へぇ!いいなあバイク!」


