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 やっと落ち着いたお兄ちゃんは、恥ずかしそうに俯いた。泣いていたことを誤魔化すように、何度も目を擦っては窓の外を眺める。


 わたしがいることが信じられないらしくて、完全に見ない振りをしている。



「お兄ちゃん、詩月です」



 話しかけてみる。声が聞こえたことを無理やり打ち消そうと頭を振っているみたい。かと思えば、お兄ちゃんは様々な場所をつねり始めた。



「いやいや、ほっぺつねっても夢じゃないし、お兄ちゃんもおかしくなったわけじゃないからね?」



 なぜかわたしまでつねられた。



「痛……くは、ないみたいよ?」

「マジか! 幽霊に触れる! つーか、寒っ!! いや、おかしいから。おかしいからっ!!」