お母さんが駆け込んでくる。もちろん、わたしには気づかない。
お母さん、ちょっと痩せたかな。当たり前だよね。わたしがいなくなったんだから。
お花やお菓子、わたしが使っていた様々なものが置かれた祭壇って言ってもいいくらいの仏壇の前に、お母さんが手を合わせていた。
まだ、一ヶ月。
わたしが死んで、話を聞いたり未練があるからって手続きをしていたら、お兄ちゃんの方は一ヶ月が過ぎていたみたい。
黒猫天使さんに聞いてびっくりしたんだけど。
「行ってくるよ、詩月」
「ごめんね、お母さん」
届かない想い。
届かない声。
伝える手段はないけれど、伝わって欲しくて。
声が震える。
お母さんはわたしの横を通り過ぎて、玄関に向かった。それを見送ってから、わたしはまた自分の遺影を見る。



