私の轡と縄を解く

その人に向けて

「ありがとうございます」


微笑む




何も返事はないが、この気配とにおい




藤堂さんだ






「何を勝手な事をしている!?
逃げたらどうする!?」



「逃げませんよ
私が苦しんでいたから、解いて下さったんです!ね!?」




さらに、人が増え



「斎藤君に似ているねぇ」

「斎藤なら、こんなに大人しくねぇよ」

「本当に女なのか?」

「着物を脱がせ」




私は、大人しい
大人しくない斎藤は、恐らく壱


藤堂さんは、私が斎藤一で
女だと聞いていないのかも


昨日、火事のあの場には
試衛館の幹部だけだったが
その場に藤堂さんはいなかった

山崎さんから、藤堂さんの事をチラリと聞いていたおかげで、取り乱すことなく
冷静でいる


私に近づいてきたのは、藤堂さん


「どうぞ」


毅然と言う


遠慮がちに藤堂さんが、私の着物を覗く


「女だ」


声で確信、藤堂さんに間違いない