課長は無言のまま席を立ち上がり、こちらに近づいてくる。

「手分けしてさっさと終わらせるぞ」

半分どころか、3分の2ほどのファイルをゴソッと持っていってしまった。

課長は呆然としている私をチラッと見た後、ものすごいスピードで入力していく。

「緒川、手を動かせ。1時間で終わらせるぞ」

スーツを脱ぎ、シャツを腕捲りしている姿に見惚れてしまい、手が止まっていた。

「は、はいっ!」

とても1時間で終わるとは思えないけど…。

集中してひたすら入力すること1時間、課長は本当に終わらせた。

「緒川は終わったか?」

「はい。終わりました」

「よし。じゃあ、帰るぞ」

課長はフロアの扉の前で待っていてくれた。

「あの、課長。ありがとうございました」