「この店が閉まるのが22時だから、その頃にもう一度来てみようよ。」



現実的な考えの聖がそんな提案をするなんて、やっぱりパリは魅惑の街……



「このまま終わるわけにはいかないよ。」


夢見がちな悠希は、もちろんノリノリだった。




私はフランス語の辞書で、フランス語の練習。



「写真撮ってください、って言いたいな。」



何度も何度も練習した。



アランは会計の時に厨房から、ちょっとだけ顔を出してくれた。



ニコッて笑ってくれた笑顔に、胸が切なくなった。




フランスに旅行に来なければ、一生会えなかった。


アランの存在を知らないまま、私は一生を終えただろう。




でも、知ってしまった。




もう私の心は、アランでいっぱい。




街をぶらつきながら、写真を撮った。



ガイドブックに載っているお店を見つけて、はしゃいでいた。



遠くに見えたエッフェル塔が鮮やかなブルーを放っていた。