弓愛(ゆあ)は、ごく普通の一般家庭の中で育った。




容姿も可愛く、いつも大人達や周りの子達は優しかった。




成長するにつれ、物事がわかるようになると色々な家庭環境がみえてくる。



同級生のうわさ話や聞かされる愚痴。



テレビでのドキュメンタリ番組




それと比べると自分の環境はどれだけ恵まれているんだろうと感じていた。




ただ、たった一つを除いては。




家族は弓愛へ限りない愛を与えてくれたし、友達にも何不自由していない。




それなりに勉強も出来る。




学校でも自分を好きだと告白してくれる異性が何人かいた。




容姿も悪くないと自覚をしている。




だが、たった一つどうする事もできなかった事がある。





不満を唯一漏らすならばその事だ。





その不満とは、霊が見えてしまう事。





だが、その不満も成長するにつれて大した事はないと感じるようになっていった。





嫌な霊が見えたが、対して良い霊も見てきたからだ。





とくに、良い霊の中にはこの世の者とは思えぬ美しい霊もいた。




弓愛の幼き頃に出会った、師匠として導いてくれた霊的存在もいる。




霊が見える事は人には言ってはいけないことも、霊感も霊能力もコントロールすれば問題なく日常の生活を過ごす事ができることもその霊的存在が教えてくれた。








そして、その霊的存在の言う通り、コントロールしてしまえば何の問題もなくなる。



一般の人と同じくらいには日常生活を送る事ができたのだった。




そして不満は解消されていった。




その為、弓愛が霊が見える事は両親はもちろん、友達も知らない。







そんな思い出に浸りながら、月夜見神社の鳥居を抜けた。





そこにいたのは一人の少女と青年。




弓愛は嬉しそうに微笑んだ。












------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------