「そうだ、せっかくだからここの近くにあるカフェで少しお話ししましょう。」


両手を合わせて奈麗に微笑む。



「は、はぁ…。」



あまりにも明るい笑顔が眩しくて立ちくらみそうだ。




引き込まれていきそうになる。




たしかに、霊感のある人とこうやって会うことが出来たのは貴重だ。



色々話してみたい気もする。




コクリと頷くと、弓愛は奈麗の手をとって歩き出した。




「じゃあ、行きましょう奈麗ちゃん。私は弓愛(ゆあ)というの。よろしくね。」



「あの…どうして私の名前…。」




軽やかな足取りの弓愛に対して、奈麗は困惑を隠せずにいた。




今日は予期せぬような事が色々とおこる。




奈麗は目が回りそうだった。




「うん?カフェについたら話すわね。」




二人は駅の方まで戻り、そこから内宮寄りに歩いて行くと、お洒落なテラスが見える綺麗なカフェを見つけた。




春休みシーズンという事もあり、人の行列が店外まで続いている。



二人はコーヒーをそれぞれ注文し、テラスの隅っこにある席に座った。



「私の出身は東京都。今日は偶々、一人で旅行に来たのよ。



あのイケメン神霊に呼ばれてね。」





確かにイケメンだと奈麗は思った。




甘いマスクで優しそうなのに、どこか厳しさを秘めた雰囲気が漂う。




「あの・・・先ほど神霊は古くから生きてる自然霊って言っていたけれど、それって神様ってことですか?」




「神様・・かあ。うん。昔はそう呼んでた人もいたかもしれないね。でも今はほとんど神様という人はいないだろうな。」



「じゃあ、神様じゃないんだね。」


「神様って結局、人が勝手にそう呼んでるだけなのよ。


神様と呼べる存在かどうかは奈麗ちゃん自身で判断しなくちゃね。」




難しくて奈麗には理解できないと思ったが、何となく弓愛さんはあの青年の正体を知っているような気がした。




それにしても、弓愛と奈麗が二人とも同じ神霊に呼ばれて神社に来て偶然同じ日に同じ時間で出逢うなんて偶然にしては出来過ぎている。



いつ何時に行くかは自分自身で決めたことだからだ。