「調べるのが嫌ではなくて、その……オッドアイだって分かるんですか?
 家系図を見ただけで。」

 歴史の教科書に載っていた家系図を見たことはある。

 教科書に載っていたものが簡易的な家系図だったとしても、いくらなんでも家系図にオッドアイだったことが記載されているとは考えにくい。

 もちろん神の子との記載もあるとは思えない。
 神の子とは辻本家、樋口家の者のみが知る言い伝え。

 それなのに前の神の子については当人にも教えられていないのだ。
 あるのは神の子に生け贄を捧げるという儀式の伝承のみ。

「オッドアイは色素異常だと思う。」

 何度か宗一郎が自分自身を表す時に使う『異常』
 異常と言うのは言い過ぎだけれど、確かに宗一郎は色白で色素が薄い。

 しかしそれと家系図とどんな繋がりがあるのか桃香には分からなかった。

 宗一郎は自分の考えを口にした。

「オッドアイが生まれる原因は不明だ。
 噂程度だけれど、色素異常が生まれるのは血が濃いせいだと聞いたことがある。」

「濃い……血?」

「血縁関係が近い者同士の結婚を繰り返したせいで僕みたいな無用の長物が生まれたんだ。」

 悲しそうに揺れる瞳の宗一郎から辛さが痛いほど伝わる。

「ごめんね。こんなことに巻き込んで。」

 かぶりを振って俯いた。
 宗一郎が悪くないのは分かっている。

 ただ、ここまで持論があるのなら桃香に断りを入れずとも、ずっと前に家系図を調べていてもおかしくない。

 どうして今まで家系図を見なかったんですか?

 口まで出かかった言葉は喉の奥につっかえた。
 神の子はどうか知らないが、生け贄としては家系図を見るなど以ての外だった。

 本家は人里離れた場所にあり、その上、何故か両家の本家らしい。
 両家の、というだけで近寄ろうとも思わない場所だった。

「今なら……桃ちゃんとなら見に行ける。」