いつもそうだ。
近づけたと思った心は伸ばした手からすり抜けてしまう。
部屋に籠ったら来るなと言われ、その上………。
何かに弾かれたように立ち上がって宗一郎の後を追った。
部屋の扉に手をかけていた宗一郎に慌てて声を掛ける。
「待ってください!まだ、話があります!」
かろうじて宗一郎は振り向いた。
手は扉のノブに置いたまま。
「宗一郎さんが私の為を思って調べようとしてることも分かってて……。
ただ、まだ、儀式と言われると身構えてしまって……。」
伝えたいことはこんなことじゃない。
それでも何か言わなければと口をついて出たのは先程の発言を取り繕う言葉ばかり。
「無理しなくていいよ。
僕の方こそごめん。」
悲しそうな微笑みを口の端に浮かべて扉を開けた宗一郎は今にも部屋に入ってしまいそうだ。
「待って、ください。
そんな顔させたいんじゃないんです。」
思わずつかんだ服の裾に力を込めてしっかりと宗一郎を捕まえる。
ため息を漏らした宗一郎がやっと扉のノブから手を離した。
「僕の方こそ、楽しい誕生日会にするつもりだった。
少し急ぎ過ぎたと思う。ごめん。
僕は……桃ちゃんと、………。
いや、なんでもないんだ。」
手で顔を覆った宗一郎が頭を振って口ごもった。
どんな表情をしているのか、何を言いたかったのか。
分からないけれど、それでも桃香は口を開いた。
「部屋にこもったら来ないで欲しいって冷たく突き放したみたいに言われて。
ショックでした。」
「………うん。」
「でもやっぱり頭に浮かぶのは宗一郎さんが優しく微笑んでいる姿なんです。
だから、その……。」
「僕は優しくなんてない。」
はっきりとした拒絶を感じて頭を横に振った。
「じゃどうして家系図を見たいだなんて。」
「自分の為だよ。」
手が外された顔は伏せられた目に何を映すのかこちらからは伺えない。
それでも桃香は言葉を重ねた。
「調べるのが嫌なわけじゃないんです。
儀式とか、生け贄とか何も関係なく宗一郎さんと過ごしたくて……。
ごめんなさい。
何を言ってるんでしょうね。」
手の甲が頬にそっと触れて、それから離された。
その手は震えていた。
「理由が……欲しいんだ。
桃ちゃんと一緒にいられる理由を。」
「え?」
顔を上げても目が合うことはなかった。
寂しそうな微笑みを浮かべた宗一郎は部屋へと入ってしまった。
捕まえていたはずの手はいつの間にか離れていて、もう一度捕まえようと空をつかんだ。
無情にも目の前で音を立てて扉は閉まってしまった。
再び扉で遮られた2人の距離に悲しさを募らせる。
この人に近づきたい。
側にいたい。
側にいる理由なんていらない。
だから側にいさせて下さい。
近づけたと思った心は伸ばした手からすり抜けてしまう。
部屋に籠ったら来るなと言われ、その上………。
何かに弾かれたように立ち上がって宗一郎の後を追った。
部屋の扉に手をかけていた宗一郎に慌てて声を掛ける。
「待ってください!まだ、話があります!」
かろうじて宗一郎は振り向いた。
手は扉のノブに置いたまま。
「宗一郎さんが私の為を思って調べようとしてることも分かってて……。
ただ、まだ、儀式と言われると身構えてしまって……。」
伝えたいことはこんなことじゃない。
それでも何か言わなければと口をついて出たのは先程の発言を取り繕う言葉ばかり。
「無理しなくていいよ。
僕の方こそごめん。」
悲しそうな微笑みを口の端に浮かべて扉を開けた宗一郎は今にも部屋に入ってしまいそうだ。
「待って、ください。
そんな顔させたいんじゃないんです。」
思わずつかんだ服の裾に力を込めてしっかりと宗一郎を捕まえる。
ため息を漏らした宗一郎がやっと扉のノブから手を離した。
「僕の方こそ、楽しい誕生日会にするつもりだった。
少し急ぎ過ぎたと思う。ごめん。
僕は……桃ちゃんと、………。
いや、なんでもないんだ。」
手で顔を覆った宗一郎が頭を振って口ごもった。
どんな表情をしているのか、何を言いたかったのか。
分からないけれど、それでも桃香は口を開いた。
「部屋にこもったら来ないで欲しいって冷たく突き放したみたいに言われて。
ショックでした。」
「………うん。」
「でもやっぱり頭に浮かぶのは宗一郎さんが優しく微笑んでいる姿なんです。
だから、その……。」
「僕は優しくなんてない。」
はっきりとした拒絶を感じて頭を横に振った。
「じゃどうして家系図を見たいだなんて。」
「自分の為だよ。」
手が外された顔は伏せられた目に何を映すのかこちらからは伺えない。
それでも桃香は言葉を重ねた。
「調べるのが嫌なわけじゃないんです。
儀式とか、生け贄とか何も関係なく宗一郎さんと過ごしたくて……。
ごめんなさい。
何を言ってるんでしょうね。」
手の甲が頬にそっと触れて、それから離された。
その手は震えていた。
「理由が……欲しいんだ。
桃ちゃんと一緒にいられる理由を。」
「え?」
顔を上げても目が合うことはなかった。
寂しそうな微笑みを浮かべた宗一郎は部屋へと入ってしまった。
捕まえていたはずの手はいつの間にか離れていて、もう一度捕まえようと空をつかんだ。
無情にも目の前で音を立てて扉は閉まってしまった。
再び扉で遮られた2人の距離に悲しさを募らせる。
この人に近づきたい。
側にいたい。
側にいる理由なんていらない。
だから側にいさせて下さい。