心が沈んでいく桃香に対して、宗一郎は姿勢を正して椅子に座り直した。
 これ以上、何だろうかと些か緊張する。

「桃ちゃんは見たくもないと思うんだけど……家系図を見てみたいんだ。」

「家系図……ですか。」

 言葉を選ぶように何かを飲み込んだ宗一郎が再び口を開いた。

「僕みたいな…オッドアイがいつ生まれ、いつから儀式が始まったのか。」

 儀式…。
 その言葉にテーブルの下で両手を握り締めた。

 まだ忘れていたい少し前の自分。

「どうして、そんなこと……。」

 もっと言葉を選べば良かったんだと思う。
 強い口調で口を出た言葉に宗一郎は顔を曇らせた。

「知りたいと思ってはいけない?」

 俯いたまま宗一郎は席を立った。
 顔にかかる髪の隙間からやるせない表情が見えて胸が痛くなった。

「あの………。」

 掛けた声は消え入るような小ささで宗一郎には届かなかった。
 無言で宗一郎はリビングを出ていった。