傷の手当てはとっくに終わっていて、言いたいことを言った塚田は立ち上がった。

「奥さんなら、もしかしたら宗一郎を救えるかもしれない。」

「………奥さんじゃないです。」

「ハハッ。これは失礼。
 宗一郎が大事だと思うのなら……。」

 今度は折れてくれた塚田は扉を開け、そして閉める間際に言い残した。

「側にいて一緒に苦しんでやって。」

 静かに閉まった扉をぼんやりと眺め続けた。
『助けてやって』でも『救ってやって』でも、ましてや『愛してやって』でもなかった。

 一緒に苦しむ。

 それなら、出来るかもしれない。
 恐怖と隣り合わせでもやっぱり心配で、そして咬まれて怪我をして逃げ出したくせに、今でもやっぱりどうしても宗一郎のことを愛していると思うから。