炎天下で女子の高い声はなんとなく聞いてられないし、モタモタと歩くぐらいなら早くゴールしたほうがいい。


「ハア……ハア……」

いつの間にか先頭になっていた私は、1キロを過ぎた頃には横のお腹が痛くなりはじめていた。


……ちょっとスピード上げすぎたかも。

頭がクラクラしてくるのはこの気温のせいだけど、熱が外に逃げていかないのはこの長袖のジャージのせい。

腕の傷痕は手首のすぐ下から肘辺りまであるから、袖を捲ることもできない。


……なんでこんな傷痕を隠しながら生活しなきゃいけないんだろう。もう、本当にイヤだ。

でもいくら嘆いても消えることはない。それは心の傷も同じだ。

なんとか走りきった私は、そのあと全員がゴールするまで先生の傍で体育座りをして待っていた。


「喉渇いた。死ぬー」

授業が終わると同時にみんなは食堂前の自動販売機へと直行する。私も喉はカラカラだったけど並ぶのは面倒だからと、そのまま教室に向かった。


誰もいない隙に制服に着替えて、一瞬だけ涼しくなったけれど、また私は長袖のパーカーに腕を通す。そしてクラスメイトたちが帰ってくる頃には耳にイヤホンをつけて机に顔を伏せていた。


眠いわけじゃないのに、頭がぼーっとする。

気づけば6限の英語が終わっていて、顔を上げた時には帰りのホームルームで担任が話を締めくくっているところだった。