結城先輩と呼ばれた人が、どんなに恐れられているのか、男子の顔を見ればすぐに分かる。

そして、その人は……先ほど帰ったはずのヒロだった。


「うぜーから消えろ」

ギロリと睨んだだけで男子たちは「す、すいませんでした!」と謝りながら去っていく。

あんなに調子づいていた人たちを一言で追い払ってしまうなんて、ヒロはよっぽどの存在なんだろう。


またヒロと目が合って、眩しい金髪が風でサラサラと揺れていた。

お礼を言うどころかまだ動くことのできない私にヒロは呆れたように声を出す。


「ちょっと来い」

引っ張られた私の右腕。

でも強引にというよりは、かなり弱い力加減で、これなら簡単に振りほどくことができる。


だけど、何故だろう。

私の冷えきっている体温を溶かすようにヒロの手は暖かくて、優しく感じた。

男に触られているのに、怖いと思わなかったのは初めてだ。