とうとう…先輩が行く日が来た。

あれから、一度会えていて。
不思議と、落ち着いた気持ちで、
今日の約束をしていた。

待ち合わせて…。
空港まで、2人でバスに乗った。

ふと、つないだ手を見た先輩が。

ちづる、指輪回らなくなったね…。
よかった。と、笑う。

大丈夫だよ。落としたら困るもん。
もう…大丈夫。

うん…。

それでも、少し心配そうに見えるのは…
今日…だからなんだよね。

先輩を見送った後の、あたしは…。
自分でも、どうなってしまうのか…
少し怖い。

手をぎゅっと握ると。

何も言わずに…。
握った手を、空いてる手でなでてくれる。

先輩の肩にもたれて…体温を感じながら
目を閉じた。

このまま…ずっと着かなきゃいいのにな。

思っていても、言わない…。

言わなくても…あたしの気持ちは
先輩が知ってるもの。

すごく穏やかな気持ちでいれるのは、
先輩と約束したから。

これからも、ゆっくり続けて行こうって。
言ってくれたから。

逃げずに…。
泣いたり笑ったりして、過ごしいてこうって。



見上げると。
先輩も、あたしを見つめる。

何も言わなくても…わかる。

お互いの気持ち。

手に取るように。

あたしたちは同じ気持ちを持って…
明日から生きて行くんだから。