全く予想してなかった先輩の言葉。
ビックリして固まってると。

また、
俺、送ってく。と言う。

ダメだよ!帰り遅くなっちゃうよ!
と、言っても。

いいから。と、まだカバンを離さない。
その間に、電車が出てしまった…。

ほんとに行っちゃったよ?

ドアを閉めて、車に坐り直すと。

うん…。大丈夫。と、やっと手を離す。

どうして…と、言うあたしに。

ちづるこそ、どうしてそんなに早く
帰りたがる?

いつものようにふざけてなんかない、
せつない顔をして言う。

だって…。

電車の時間が…と言いかけてやめた。

先輩が、怖いくらいにあたしを求めてるのが
わかるから。

…わかった。
じゃあ、送ってもらうよ。
でも、帰り道、1人だよ?
冬道危ないから気をつけて帰らないと…。

言い終わらないうちに、抱き寄せられる。

昼はあんなに周りを気にしてたのに。
あたしの方が車の外が気になってしまう…。

今日の先輩は、いつもより寂しがりだね…。

ほんとは…。
気がすむまで抱きしめられていたい。
早く帰りたいわけない。
でも…。
東京より、ずっとずっと近い、
そんな距離でも、簡単にあたしたちの
邪魔をするんだよね…。


見送るって、こんな気分になるんだな…。
先輩がポツリとつぶやいた。

あたしの頭をなでて。
ごめんな。と言う。

あやまらないで。
あたしだって、ほんとは一緒にいたかったよ?

うん…。じゃ、行こうか。

少し口数の少なくなった先輩。

お互いを想う気持ちが、あればあるほど。

距離がせつない。

この時のあたしたちは、それを痛いほどに
実感していた…。