次の日継母は、美しい黒むらさき色でつぶが大きくはりがある、とてもおいしそうなぶどうに毒をぬり、雪白姫のところに持って行きました。

 りんごが苦手でもぶどうなら食べられると思ったからです。

 ですが雪白姫は首を横に振ります。

「申し訳ありません、お義母さま。ぶどうは昔、お父さまがのどにつまらせ何日も寝こんでから、こわくて食べることができないのです」

 継母はおどろきました。ぶどうが食べられないというひとを初めて見たからです。

 でもこれでは今日も雪白姫に毒を飲ませることができません。


「それでは雪白姫、あなたの好きな食べものはなんですか?」

 困った継母は、思いきって雪白姫に聞きました。

「わたくしが好きな食べものは、うなぎのスープにぶた脚のあぶりやき、ニシンの塩づけに肉と野菜の重ねやき。サクランボ酒のケーキに、ジャム入りのあげパンです」

 それを聞いて、継母はますます困ってしまいました。

 食べものに毒を入れるため、使用人に料理を作ってもらうわけにはいきません。でも継母は料理がいっさいできないのです。


 そんなことを知らない雪白姫は、継母が料理に興味があるとかんちがいして、とても喜びました。

「お義母さまも料理に興味があるのでしたら、ぜひ一緒に作りましょう!」

 継母は料理に興味はありませんでしたが、雪白姫に毒を飲ませるには、好きな食べものを作るしかありません。

 こうして継母は、雪白姫に毒を飲ませるために、雪白姫と一緒に料理をまなぶことになったのです。