生まれてはじめて台所に立った継母は、料理はまるで実験のようだと思いました。野菜や肉を食べやすい大きさに切り、調味料をスプーンではかってなべに入れるのです。

 そして料理はまるで魔法のようだとも思いました。ひとつひとつの調味料だけを口にしてもおいしくはないのに、色々な調味料をまぜるととてもおいしくなるのです。


 そうしてできあがった料理を一口食べた継母は、あまりのおいしさにおどろきました。

 めしつかいが作って運んできてくれる料理を食べても、とくに感想はありませんでした。ですが自分で作った料理はどうでしょう。今まで食べた料理のなかで一番おいしかったのです。

 あまりのおいしさに、継母はできあがった料理をあっという間に食べきってしまいましたので、雪白姫に毒を飲ませることはできませんでした。


 それからも継母は雪白姫に毒を飲ませるため、雪白姫と一緒に毎日料理を作りました。

 ですがどんな料理を作っても、とてもおいしくできあがりましたので、継母は毎日食べきってしまい、毒を入れることができません。


 そんな日々がつづくうちに、継母は、料理に毒を入れることを、すっかり忘れてしまったのです。