「じゃ、乾杯」
「……何にですか?」
「うーん、リンちゃんの素敵な未来に」
あたしはぷっと噴き出した。
「何?」
「いや……くさいなぁって……」
「じゃ、何に乾杯?」
「優しいロアさんに」
あたしは、にっこりと笑ってこう言う。
「うーん、なんか抵抗あるけどいいや。乾杯」
ロアは気恥ずかしそうに、開いた缶をあたしに差し出した。
「乾杯」
あたしはにっこりと微笑んだまま、同じく開けた缶をロアの缶に当てて一口だけ飲んだ。
「ロアさんって、お酒強いんですね。さっきも飲んでたんでしょ?」
「うん、缶ビールとかなら一日中飲めるよ」
「凄いですね」
あたしは梅のおにぎりに手を伸ばし、一口噛った。
「コンビニのだから、味の保障はするよ」
ロアは苦笑してから、またお酒を飲む。
「はい、美味しいです。ロアさんはお料理出来るんですか?」
「んー、まぁ、少しだけなら。オムレツは無理かな」
「あ、それはあたしも無理です。チキンライスなら作れますけど」
「うん、あれ包めないんだよ。卵が破れちゃって」
「じゃ、何が一番得意ですか?」
「ブランケット・ド・ヴォー」
あたしは眉を寄せて首を傾げた。
な、何?
ブランケットドボン?
ブランケットがどっかに落ちちゃったのか?
「フランス料理だよ。仔牛のクリーム煮のことね。ブランケット・ド・ヴォーって言うの」
「ふ、フランス料理!? ちょ、待ってくださいよ。ロアさん、あなたどこのコックさんですか?」
ロアは肩肘ついて、あたしの反応を面白そうに見つめていた。
「コックじゃないけど、作れるよ。……あとはね、カナル・ア・ロランジュ」
「か、カナリア・ドカンジュ?」
「カナリア爆破してどうすんの。鴨のオレンジソースだよ」
「か、鴨!?」
そんなもん使って、料理なんてしたことすらない。
