外は雨が降っていた。
「早く連れ戻さないと……」
水溜まりを走ると靴の中に水が入って靴下が濡れる。
でも、そんなの今は構っていられない。
一刻も早く姉さんを連れ戻さないと……。
姉さんは社長令嬢として生きてきた人だ。
貧富の差の激しいこの国では生きづらいはずだから……。
「それでね……」
ふと、雨の音の中に姉さんの声が聞こえた。
声がした方を見れば、傘を差しながらキャリーケースを引く姉さんの姿をバス停の所で見つけた。
「姉さ──」
「弟の味方をし続ければ家を追い出されるっていう貴方の作戦、成功したわ」
「ッ!?」
バス停にいる姉さんの隣には見知らない男がいて、姉さんからキャリーケースを受け取った。
「酷い女だな。弟君、あんたのこと慕ってたんだろ?」
「ええ。だから、利用しろって言ったのは貴方じゃない」
え、姉さん?
僕は姉さんの言っていることが分からなかった。



