開いたドアの所には6歳くらいの女の子とその女の子を抱っこする赤目の少年がいた。
「パパ!ママ!」
女の子がまだ舌足らずの口で紡いだのは両親を呼ぶ言葉で、その言葉に智さんはその女の子の前の頭を撫でる。
「アリス、どうしたー?ちっちゃな手が可愛いなー」
あぁ、この子がこの夫婦の愛娘のアリスちゃんか……。
智さんが『可愛い』『天使』『嫁に行くと思うと死にたくなる』と親馬鹿を言うだけあって、アリスちゃんは幼いながらも整った顔立ちをしている。
「パパとママに会いたくて、ヒカリに連れてきてもらったの!」
「そっかー、ヒカリは優しいなー。済まんな、アリスのワガママに付き合わせて」
智さんは赤目の彼に申し訳なさそうな顔をすると、彼は首を横に振る。
ふと、赤目の少年と目が合った。
そして、私は息を飲む。
彼も此処にいるということは此処で産み出された存在に違いない。
それなのに、凪いだ海のように穏やかで不思議な雰囲気をしていた。
整った顔立ちをしているだけではない人を惹き付ける……。
そんな雰囲気を。



