「それで、何故私を探し回っている?特に悪さをした覚えは無いんだが……」





私は本を閉じると服の裾を押さえて木から降りようとした。






すると、瀧澤は私に手を差し出してくる。







その手を取ればそっと手を引かれ、私は瀧澤の腕の中に納まりながら着地する。






「旦那様がお呼びです」





着地するなり、用件を伝える瀧澤を睨み付けて歩き出した。





好きな人の腕の中に納まった私の胸はうるさいくらいに高鳴っている。






それなのに、用件を伝えるなんて……。






私はため息を吐くと、お父様の書斎へと向かった。





屋敷の一番見晴らしの良い部屋がお父様の書斎で、その部屋の前に着くとドアをノックしようとした。




でも、室内から聞こえるお父様と妾の女の声にその手を止める。





……私を呼ぶなら妾の女を何処かにやってから呼んでくれると有り難いんだけど。





しかも、聞こえる声は明らかに……ねぇ?