雪と断罪とそして、紅



ふいに殴り飛ばしたことで、男は吹き飛んで壁に叩き付けられた。




俺はそんな男に近付く。






そこからは記憶がない。





気付いたときには男の顔は原型を留めていなくて、男が持っていたナイフを奪い取ったらしく体は滅多刺しにされていた。






何処からどう見ても男は生きていないと分かる有り様だ。





「何してんだ、俺……。こんなことしたって黒代は戻ってこねぇのに……」




俺はその場に座り込むと、空を見上げた。





頬にポタリと雨が落ちてきた。




何滴も何滴も落ちては俺の頬を濡らした。





でも、頬を伝うのは雨だけじゃなかった。





目から溢れてくるものが雨と混ざって、頬を伝う。





黒代は暴行されている間も俺の名前を呼び続けた。






俺に助けを求めていた。






それなのに、俺は助けられなかった……。





「黒代……、ごめんな……。気付いてやれなくて、ごめんな……」





うつ向いて唇を噛み締めれば、口の中に血の味が広がった。





──と思えば、慟哭が口を引き裂いた。