「アイツが俺の嫁になるとか有り得ないんだが」





俺があからさまに不機嫌な声で答えると、今度は母さんの小さな笑い声が聞こえた。





『分かってるわよ。私も何度か見たことあるけど、あの子は寿永の嫁には向いてないわ。それに、貴方にはもっと相応しい子が傍にいるじゃない』






母さんの意味深な言葉に、俺はむず痒くなって頬を掻く。





まったく、母さんは何でもお見通しか……。





「知らないうちに随分と彼女を高く評価してるな。汀にでも唆された?」





『確かに汀から彼女のことは聞いてるわ。でも、私は自らの目で見てあの子を評価したわ。それで、結局どうするの?』





どうやら、決断は俺に委ねられているらしい。





別に配下に入りたければ入れば良い。






でも、あの女が俺の嫁になるのだけはごめんだ。






それに、今はそんなことに構ってるほど暇じゃない。






「母さんに任せる。でも、あの女が俺の嫁になるのだけはごめんだ。それと、俺は今それどころじゃないんだ」





浅井のことがあるというのに、母さんと長々と話し込んでしまった。





話を切り上げるために早口でそう告げると、母さんは何かを察したようだった。





『あの子に何かあったの?』





察しの良い母さんだ。





俺は手短にさっきのことを母さんに話した。