「──で、思い出せてくれるんじゃねぇのか?」




俺は手下と共に延びかけている男の髪を掴んで顔を上げさせる。





どんな大人数で来ようと、俺を倒せるはずがねぇ。





弱い奴ほど集団で殴りかかってくる。





でも、そんなの俺の敵じゃねぇ。





男の髪を離して、立ち上がった俺は咥えていた煙草を地面に落として火を踏み消す。




「わりぃけど、全然思い出せねぇや。弱い奴のことは覚えねぇ主義でな」





そんな言葉を言い残してその場から去ろうとした俺は男も手下も完全に延びていると思って油断していた。





「調子こいてんじゃねぇぞ!」





背後から聞こえた怒号に振り向こうとしたが、突如頭に感じた激痛に膝から地面に崩れ落ちた。





頭を殴られたと気付いたときには俺は延びていたはずの奴らから殴打されていた。





いや……延びてた奴らじゃねぇな。






こいつら、最初から二手に分かれてやがったな……。





卑怯なことをしやがる。





俺を返り討ちにしてぇなら正面から堂々とやればいいじゃねぇか。




くそ殺ろう……。




あぁ……しっかりとてめぇらのことは覚えたぜ……。





集団でこんな卑怯なことをする奴ら……ぜってぇ仕返ししてやる……。




そう意気込んでいたのに、俺の意識は殴打の痛みで飛んだ。