彼女にとって二人が大切なのは分かってる。
だけど、貴女の傍には俺がいる。
それを分かって欲しかった。
「俺だけじゃない。羽取さんや佐滝さん、周さんや依良さんもいる!たくさんの人が貴女の傍にいて貴女を支えてる!」
大切な人を失うのは悲しいことだ。
ましては最愛の人だったら余計に悲しいだろう。
でも、その最愛の人達はアリスさんが前に進めず、泣いている姿を見たくはないはずだ。
悲しむことは悪いことじゃない。
俺はその悲しみを引っくるめて、彼女の傍にいて支えていきたい。
「……その目、和真に似てる。でも、言ってることは天河が言いそうなこと……」
アリスさんは譫言のように呟くと唇を噛み締めながらうつ向いてしまった。
あー、やっちゃったな……。
しまったという顔で羽取さんを見ると、彼は口パクで「大丈夫だ」と言う。
いや、この状況で何処が大丈夫なんだ?
羽取さんの励ましが妙に虚しくて、顔がひきつってしまう。
「アリス様!」
すると、さっき加賀井室長を止めた男の研究員がこちらに向かって走ってきた。



