「俺は──」
「あの研究さえ行われてなければ、切碕も生まれなかった。……和真も天河も死ななかった」
切碕が生まれなかった?
確かに人体実験を行わなければ切碕は生まれないし、兄さんや天河が死なずにすんだかもしれない。
でも、人体実験が行われてなければ……。
「アリスさん、人体実験を行わなかったら天河には会えませんでしたよ。それに、風間さんや羽取さん達だって生まれなかった」
俺の言葉に、アリスさんの目が揺らぐ。
彼女の周りには人体実験で産み出された人達がいる。
彼らはアリスさんを慕っている。
天河だって母親が作られた人間。
人体実験でその母親が生まれなければ、天河はこの世に生まれることはなかった。
人体実験が全て悪い訳じゃない。
かといって、研究者が悪い訳じゃない。
誰かが悪いとかない。
皆、何かの為に仕方なくやっていたことだ。
「……っそんなの分かってる!」
すると、アリスさんの怒鳴り声が研究所の薄暗い廊下に響く。



