「じゃあ、幸せにしてもらおうかな」





「え?」







「僕を幸せにしてくれるんでしょ?なら、幸せにしてよ」





彼女の背中に手を回すと、か細いその体を抱き締めた。






少し前までは彼女はまだ依良の後をついて歩く幼い頃のイメージしかなかった。





でも、向けられる好意に気付いて、彼女はもうあの頃の子供では無いのだと実感する。






自分の意志を示すことのできる大人なのだと。





好きな男を支えるほどの強さを持った大人なのだと──。





そのことに気付いたとき、僕は彼女を好きになったのかもしれない。






彼女には彼女を幸せにする相応しい男がいると諦めていたけど、諦めなくても良いようだ。





何せ、彼女が僕を幸せにしてくれるみたいだからね……。





「幸せにします、絶対!」






僕の背中に手を回して強く抱き着いてきた彼女の仕草に、僕は幸せを感じた。






好きな人から愛され、愛する。





それはごく普通のことかもしれないけど、僕はそれが何よりも幸せに感じられた。





紗也ちゃん。





幸せにしてよって言ったけど、僕も君を幸せにしたいと思うよ。






だから、二人で幸せになろうか……。







≪玖下side end≫