紗也ちゃんは僕のいるベッドの脇に膝をつくと、僕の手を握ってきた。
その手の温もりに、僕は心の中の本音を吐露する。
「本当に冬雪ちゃんのことはもう良いんだ。ただ、人を殺してきた僕が幸せになるのは律生や母さん、殺した人に申し訳なくてさ……」
僕がこれまで奪ってきた命は少なくない。
そんな僕が幸せになる資格なんかあるんだろうか?
すると、手を握っていた紗也ちゃんが僕を抱き締めた。
「幸せになったらいけない人なんかいないんです。……今度は玖下さんが幸せになってください」
「でも、僕は……」
「幸せになれないなら私が玖下さんを幸せにします」
紗也ちゃんは僕の顔をまっすぐ覗き混んできた。
意志の強いその眼差しは何処か冬雪ちゃんにも依良にも似ていて……。
僕はそんな彼女の姿に自然と頬が緩んだ。
……まったく、僕は意志の強い女の子に弱いなぁ……。