「冬……雪……?」
目の前の光景が信じられず、俺は恐る恐る彼女に近付く。
そして、彼女の頬に触れてそっと撫でた。
すると、冬雪は目を閉じて俺の手の温もりを感じるように手に触れてきた。
二十年間感じることのなかった冬雪の懐かしい温もり。
「やっと触れられた……。ずっと触れたかった……」
冬雪の小さな呟きと共に、頬に触れた俺の手に涙が触れる。
冬雪が目覚めた……。
「お母さん!」
詩依は誰かから聞いたのか血相をかいて部屋に飛び込んでくると、目覚めた母の姿に呆然とする。
そんな娘に、冬雪は穏やかな笑みを浮かべた。
「詩依」
母に生まれて初めて名前を呼ばれ、生まれて初めて母の声を聞いて、詩依の目から涙が溢れた。



