「うるさいよ、良威。紗也」
苛立ちのこもった目で二人を睨んだ。
「お兄ちゃん!冬雪ちゃんが……っ!」
紗也は息を整えながら涙目で俺を見る。
冬雪?
冬雪に何かあったのか!?
俺は二人の言葉を最後まで聞くことなく玖下の部屋を飛び出して、冬雪の眠る部屋へ走った。
冬雪が眠るのは本館の三階の真ん中の部屋。
一番眺めの良く、日当たりの良い部屋だ。
「冬雪!」
階段を全力で駆け上がり、廊下を走って冬雪のいる部屋のドアを押し開けた。
頼むから何事も起きてませんように……。
でも、その願いは虚しく、起きてしまっていた。
「依良」
俺を呼ぶ声がする。
ドアを開けた先にはベッドから起き上がり、まっすぐ俺を見ている人がいる。
優しい笑みを笑みを浮かべた人。
その人は最愛の妻、冬雪だった。



