雪と断罪とそして、紅



「でもね、それでも生まれてきて良かったと思ったよ。愛してくれた人がいたからね」





僕を愛してくれた人はいた。






今は人を殺すなんて生き方をしているけど、僕は生まれてきて良かったと思えた。





僕は隣で膝を抱える彼女に視線を移すと、目を細めた。





「大丈夫、生きていれば愛してくれる人が現れるよ」





よくそんな綺麗事が言えたものだ。






愛する人がいる女を、愛してくれる人がいる女を殺したのは誰だ?





──僕だ。





そんな僕が言って良い言葉とは思えないけど、言わずにはいられなかった。






それくらい彼女の存在が弱いものに感じられた。






「──じゃあ、貴方が私を愛してくれる?」





「え──」





そんな言葉と共に目深く被っていたフードを引っ張られ、それと同時に唇に柔らかい感触がした。






さっきココアの飲み口に触れていた柔らかな唇だと気付いたときには離れていて、目の前には目に涙を浮かべた彼女がいた。