「あのさ、ストーカーするのは勝手だけど僕の正体分かってる?」
この子が傍にいると調子が狂う。
結局殺せなかったし、今も殺せずにいる。
そんな女が傍にいたら、ジャック・ザ・リッパーの名が廃りそうだ。
「ん?女の人を夜な夜な襲ってる変態サン?」
「……殺すよ?」
確かに夜な夜な襲って、殺し歩いているのには間違いない。
でも、変態呼ばわりされるのは心外だ。
殺すと脅せば、彼女は「怖い怖い」と楽しそうに肩を竦める。
僕は子供みたいな彼女に呆れ、自然とため息を吐いた。
「……ねぇ、赤目のお兄さん」
ふと、彼女は僕を呼ぶ。
名前を名乗ってないから彼女は僕のことを赤目のお兄さんと呼ぶ。
若い外見とは裏腹に、僕はもう還暦を目前に控えているからお兄さんと呼ばれるには年を取りすぎている気がする。



