「くっ……わたしとしたことが。32,375だ」
「よっしゃあ。これで同点だからな」
「べつに同点くらい、どうってんことねえ。昼休みが終わるまでに逆転してやる」
こっそりダジャレをぶち込むと、小野寺くんは少し引いたような目でわたしを見つめた。
体も、ほんの少しだけ通路のほうへ傾いている気がする。
「お主、ダジャレは嫌いか?」
「……親父で十分体制はできている。気にすんな、どうってんことねえ」
「おや、さてはお主、我と同じ類の人間かい?」
くすりと笑う小野寺くんに、これはこれは、と先ほどまで人様の電卓を叩いていた右手を差し出すと、
彼はシャーペンを持っていた手で握り返してくれた。
「同士よ、出逢えてよかった」
「こちらこそ」
小野寺くんは一言そう言うと、ちらりと時計へ目をやった。
「おっと、時間がない。では、数学の闘いへ戻ろうか」
「どうぞお手柔らかに」
「ああ……ちいとそういうわけにゃいかねえな」
「おやおや……」



