「この信号って赤になると長いんだよね」
「な。最近かなりの確率で引っかかってる気がする」
「カケルがわたしを待たせるからじゃない? もう少し早ければ、タイミングがずれて青だったかも知れない」
「ああ……」
なるほどな、とカケルは呟いた。
「最近、顧問の機嫌がいい日がねえんだよ」
「そうなの?」
「なにがあったか知らねえけど、ほぼ毎日説教が挟まる」
「ふうん……」
大変だね、と続けると、目線の先の信号が青に変わった。
今日はずいぶん早いじゃないかと心の中で舌打ちをし、歩き出すカケルに合わせて足を踏み出した。
決して長くない距離のあと、カケルは「じゃあな」と手を振った。
「気をつけてね」と笑顔を返すと、「お前もな」と珍しい言葉が返ってきた。
「雪降ってっから。ちび運動神経悪いし、すっ転ぶなよ」
「うるっさい、余計なお世話よ。カケルこそ、調子に乗って飛ばしたりしないでよ?
ブレーキ効かなくて事故に遭っても知らないからね?」
「俺はそんな馬鹿なことしない」
じゃあな、ともう一度手を振り、カケルはペダルを踏んだ。
ただ自転車を漕いでいるだけなのにかっこいいなと思いながらその後ろ姿を見送る。
しばらくして、わたしも大きな自転車にまたがった。



