ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



昼休みの残りを満喫する生徒たちの話し声や笑い声で賑わう教室の一角で、電卓を叩くカチャカチャという音が響く。

「376」

「おっけ。次――」

「21」

「おーっとちょっと待てい」

小野寺くんはよしと言いかけてストップを掛けると、ノートに素早くなにかを書いた。

「くっそ、そうだ」

「今、わたしが1点リードね?」

「おう。次――」

小野寺くんの美声が並べる式を、カチャカチャというボタンの音で繰り返す。

「32,275」

イコールのあとに浮かんだ数字を言葉にすると、小野寺くんは「嘘だろ」と慌てたような声を出した。

再び、素早くノートになにかを書く。

間もなく、「32,375じゃね?」と言った。

「なに、このわたしが間違えただと?」

式、と言うと、小野寺くんは先ほどよりゆっくりと式を並べた。

最後、イコールを押すと、確かに32,375の数字が浮かんだ。