ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



「まあ、恋も今まで通りですね。あっ、でも、1人遠い存在だったけど少し話すようになった男子はいます」

「へえ、カケルくんとどっちがかっこいい?」

「ちょっと話すようになった人でしょうかね。カケルのことは、飽きっぽすぎて最近嫌いに思えてきました」

「えっ、なにかあったの?」

鏡越しに、一瞬店長と目が合った。

「高校に上がってから間もなく仲よくなった女の子がいるんですけど、その女の子が今カケルと付き合ってるんですよ」

店長はわたしと目を合わせると、テンポよく髪を切っていた手を止め、目を見開いて黙り込んだ。

「いろいろ話を聞いていくうちに、あれれその男なんか知ってるぞってなって、名前を確認したらそうだったんですよ」

「へえ……。そんなことがあるの」

「世の中なにが起こるかわかんないですよね」

「そうねえ……」

「で、しかもその女の子、カケルにとって3人目の彼女なんですよ。

わたしと付き合って間もなく他の女子に目移りして、

わたしと別れてから付き合った子もすぐに飽きたんだか、今の――わたしの友達って感じです」

「へえ……。当時の里香ちゃんはろくでもない男に捕まったねえ」

「わたしもそう思います」

「その里香ちゃんの友達は? その子でいいって?」

「わたしも、そんな飽きっぽい男振ってやれって言ったんですけど、今は好きだからこのままでいいって。

まあすでに振ってやろうかとも思ってるらしく、本気でそう思え次第振ってやるみたいなこと言ってましたけどね」

「ふうん……。まあ、そういう男は変な自信ついちゃってるから何回か振られたほうがいいのよ」

もっと現実を見るべきだわ、ちょっとかっこいいもんだからきっと調子に乗ってるのよと語る店長に

「今までになにかあったんですか?」と尋ねると、

「あたしの恋は最初で最後よ? 高校時代の彼氏が今の旦那だから。ただそういう、性格の悪い男が許せないの」と返ってきた。

「店長、優しい人なんですね」とわたしが笑ってから間もなく、髪の毛のカットが済んだ。