ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



「2年に上がってからはどう?」

わたしの髪を切り始めて間もなく、店長が訊いてきた。

「どういう意味ですか」と鏡の中の彼女に笑い返す。

「いやじゃあ……勉強面ってことにしておこうかな」

「それ絶対恋愛のこと聞きたいやつじゃないですか」

「いや、全然? あとでたっぷり聞くから、今は全然大丈夫よ?」

「聞くんですか、あとで。しかもたっぷり」

ふふふと笑う店長につられ、わたしも笑った。


「まあ……勉強は今まで通りですよ。2年に上がるのだってぎりぎりでしたし」

「へええ……」

ふふっと控えめに笑う店長を馬鹿にしてますよねと睨むと、彼女はいやいやと首を振った。

「で、恋のほうはどうなのよ?」

「もう聞くんですか」

「聞くよ。里香ちゃんのことずっと気にしてるもん」

「絶対嘘だ」

はははと笑って「前髪はどうする?」と訊いてきた店長に、「上手く整えといて」と返した。